世界がゆっくりと動いていた。だけど僕は呼吸をするのを忘れていた。
今って何世紀?
何時、何分?

僕…生きてる?

そんなくだらないことばかり頭の中に浮かんできて逆に怖くなった。



「……なに?」



僕を見つめて彼は言う。
その瞳はとても澄んでいて思わず見とれてしまうほどだった。綺麗すぎる容姿は写真とほぼ同じで、やはり外国人の匂いが混ざっていた。
色素の薄い髪の毛や、色白な肌に赤い唇。


あなたが、莉子の。


そう思うと何となく納得できる気がした。




「あ、いえ。…その」




言葉が浮かんでこないや。
そういえば以前お兄さんが言っていたことがあったな。
莉子が彼と出逢ったのは病院でだと。
彼は一体どこが悪いのだと言うのだろう。
外見ではそこまでは分からない。




「あの、莉子はもういないですよ」




先手を打ったのは僕だった。




「莉子…?知ってるの?」




知ってるよ。
あなたは莉子の好きな人だってこと。