「さぁ帰ろう」



校門をくぐり駅に向かっている最中、前から少年が歩いてきた。僕と同じくらいの年齢だろうか。
星柄のパーカーを身に纏い、下を向いて歩いている。
僕は気にとめずに横を過ぎようとした時、ある歌が耳に入ってきた。



「…え?」



それは莉子がよく歌っていた英語の歌だった。
耳を疑った僕は歩くのをやめて後ろを向く。


少年は僕の学校の前で足を止めて、学校を見上げていた。
周りの木々が風に吹かれて音を出す。
その横顔に僕はひどく驚いた。

何故ならば、その少年が以前莉子から「好きな人だ」と見せられた写真に写っていた人物だったから。



金縛りにあったように体が硬直して動かない。
次第に呼吸が、そして思考回路がやられていく。



あなたは、莉子の。




そして少年はゆっくりと僕の方を見た。