この世界は残酷なほど美しい



「私、先輩にはすごく感謝してるんです」




「え?どうして?」



「坂井先輩を好きになったこと後悔してないです」



僕は彼女を振ったのに何故感謝をするというのだろう。
何故後悔してないと言えるのだろう。
それを分かっていない時点で僕はまだ恋愛初心者だった。
彼女は僕を見上げてじっと顔を見つめる。

少しだけ明るくなった髪色が今の彼女にとても似合っていた。



「私ね、坂井先輩を振り向かせようと一生懸命努力しました。化粧とか、髪型とか、香水とか、ネイルとか。どうしたら振り向いてもらえるかいっぱい考えてました。結果は振られちゃったけどその私の努力を見てくれてた人がいたんです」




彼女は賑やかなカバンから携帯を取り出した。
ストラップには有名なキャラクターのマスコット。
それが楽しそうに揺れていた。そして彼女はプリクラ画像を見せてきた。




「私の彼氏なんです」