この世界は残酷なほど美しい



僕は笑うという行為が好きではなかった。
感情を表には出さない性格のせいか、気分がいいのか悪いのか、相手に伝わらないことが多々あった。
だからよく小さい頃蓮に「怒ってんの?」と怒ってもいないのに言われた。
結果、その発言にイラッとしてしまう。
悪循環だなと気づいたのはちょっぴり大人になった時だった。
だから頑張って直そうとしたけれど始めから上手くいくことなど無い。
だけどようやく、笑うという行為が自然に出来るようになった気がするんだ。



「坂井先輩、何だか変わりましたね。いい意味で…また素敵になりました」




「え…そうかな…僕には分からないけど」




「女の勘ってすごいんです。」



「へぇ、じゃあ僕にもその女の勘ってやらを分けてよ」




そう言うと彼女は笑っていた。目の前にいる人が笑うと僕も嬉しくなる。

神様はこんないい道具を与えてくれたのに今まで使わないでいた僕が本当に馬鹿だと思った。