この世界は残酷なほど美しい



ズキンズキンと頭が唸る。
頭によぎったのは、真っ白な病室だった。
息を切らしながら走るのは幼い僕だった。

目をぎゅっと瞑り、ゆっくりと息をするとその情景は消えていった。



「僕は父さんみたいに冷血人間にはなりたくないから」



その時ようやく右手の拳が解放された。
握りすぎて少し赤くなったそれは細胞からゆっくりと呼吸をする。
そんな生きる様を見てちょっと嬉しくなった。



「話し中のところすいません。転校生の書類が届きました」



そう言って突然現れたのは、事務の人だった。
そして一枚の紙を先生に渡した。



「転校生?」




「あぁ、そうなんだ。明日からクラスの一員となる。」



僕はちらりとその書類を見た。
氏名 安野莉子(あんの りこ)

写真は添付されていなかったが、呼びやすい名前だと思った。



「流星、頼みがあるんだが、この転校生の面倒を見てくれないか?」




「えっ何で…僕…」




先生には気づいていないのか。僕が露骨に嫌な顔をしているのを。
そして人間にあまり関わりたくないこと。



なのにそのお願いはかなり苦しい。