この世界は残酷なほど美しい




奈緒子がくれたミルククリームパンのおかげで午後からの授業でお腹が鳴ることはなかった。
甘かったけれどやっぱり美味しかったなぁと空に浮かぶパンの形をした白い雲を見つめてそう思った。



そして夕方。
僕はある場所へと向かった。



「失礼します」




そこは職員室だ。
担任の沢村先生に呼び出されて来たのだ。
職員室に入るとジャージ姿の沢村先生。
ジャージが全く似合わない人を初めて見るくらい似合っていなかった。



「先生、何?」



「流星は確か志望校T大の天文学部だったよな?」




「う、うん。そうだけど?」




「推薦の話が来てるんだけど、どうだ?」




え、推薦?
僕は先生の言葉に耳を疑った。つい最近行われた模試の結果はB判定。
これでも頑張って頑張ってD判定からようやくBまで上がれたところだ。
だけど推薦で合格してしまえば試験などない。
ラッキーな話といえばラッキーすぎる話だった。



だけど心に引っかかる何かがあった。