この世界は残酷なほど美しい



気づいたときにはもう遅かった。



「僕のお昼…!」



目の前でいなくなったお気に入りのミルククリームパン。
僕はがっくりと肩を下ろしていると、隣にいた奈緒子が「はい」と僕にあるものを差し出した。
それは僕の大好物の…



「ミルククリームパン!」



「購買に来たのがあたしが一番だったみたいなの。あたし自分の分は買ってあるから流星くんにあげるよ。」




「い…いいの?」




「うん。流星くんがさらにかっこよくなった記念日のお祝い!」



そう言って僕の目の前にパンを差し出す奈緒子がどこか天使に見えた。
人ってこんなに優しいのかと改めて実感をする。
僕は有り難くそれを受け取った。



「ありがとう。これで午後からの授業頑張れるよ。」




「お腹鳴ると恥ずかしいもんね。教室行こっか」





僕たちは笑い合って教室に向かった。