初夏の匂いで溢れた空気の中で僕は必死になってサナギから蝶へ進化しようとしていた。



「あの…流星。どうして…その…あたしなんか。」



莉子は相変わらず視線を足元へ落としたままで僕と目を合わせないままだった。

それでも肩を並べて歩いていく。



「あたしなんかって?」



「病気持ってるし…ちょっと変わってるし…日本語たまにおかしいし…」



「きっとね、そんなことを気にならないくらい好きな理由が多いと思うんだ。」




莉子は自分に自信が無いと言う。
でもそんなの僕には関係なかった。
それよりもっともっと莉子の魅力的な部分を知っていたから。例えば、一途なところ。
例えば、流れ星の意味を知っていたところ。
例えば、物事に必死なところ。
考えれば考えるほど色々な部分が見えてくる。
だから莉子が「あたしなんか」と言っても僕は「それでも莉子がいい」と答えるよ。