ヒカルさんは僕に一つ一つ丁寧にあの時のことを詳しく教えてくれた…。


ヒカルさんが見てきた世界へと色を変える。

…7月7日。
その日は雅と美羽の結婚記念日だった。
この日、俺は仕事をオフにし、美羽の病院へと向かった。
向かっている最中、美羽の容態が急変したと、雅の父親の光輝(こうき)さんから連絡を貰った。
俺は慌てて雅に連絡をする。



「お前、今どこにいるんだ?美羽が…」



雅は小さな声でこう言ったのだ。



『今…病院の屋上。』




そう、あの日雅が一番に病院にいたのだった。




「屋上?んなとこで何してんだよ!早く美羽のとこに行けよ!もう逢えなくなるかもしれねぇんだぞ!!」




『……美羽と約束したんだ』




「何を?」




『……美羽は俺のために生きてくれるって』




雅は美羽という存在を無くしてしまうのが怖かったのだ。
だから美羽のところには行けなかった。
本当は行きたいはずなのに、美羽がいなくなる瞬間を見たく無かったんだ。



約束、したから。