もう一口紅茶を飲むと先ほどより甘く感じた。
高級そうなカップをゆっくり置いて、はぁと息を吐いてみる。
「あ…あと…今日父さんが泣いてたんです。母さんの遺影の前で。僕そんな父さんを見るのが初めてで…。泣くくらいなら何であの時父さんは母さんのところに来なかったのか…分からなくて」
「流星は知らないんだろうな。あの時のこと」
「え…?」
するとヒカルさんは机の上に置いてあった手帳からある写真を一枚取り出した。
そしてそれを僕に見せる。
そこには学生時代の父さん、母さん、そしてヒカルさんが写っていた。
その風景は卒業式だった。
「この写真の中の美羽、すごい笑ってるだろ?入学式のとき美羽は全然笑わない子だったんだ。美羽には昔好きな人がいて…だけど美羽の目の前で死んだんだ。事故で…。そんな美羽を助けたのが雅なんだ。雅は美羽を全力で愛していた」
初めて聞かされた真実を、僕は受け止められるほど出来た人間ではなかった。
だけど父さんが母さんをどれだけ愛していたのか。
あの約束をどれだけ大事にしていたか、ヒカルさんの話しを聞いて見えなかった世界がちょっとだけ見えた気がしたんだ。


