行き着いた場所は屋上だった。なぜここに来たのかは僕にも分からない。
気づいたときにはそこへ向かっていて。
反射的に体が動いていた。
不思議なものだ。
莉子がそこにいるのかも定かではないのに勝手にここへ来てしまうなんて。
屋上に繋がるドアをゆっくり開けると、やはりキミはそこにいた。
体を小さくさせてこちらに背中を向けて座っている。
僕はゆっくりと近づいていった。
「…莉子」
驚かさないように小さな声で名前を呼ぶとビクリと莉子の体は反応をした。
「…だい…」
“大丈夫”と言おうとした瞬間、前に莉子に言われた言葉を思い出した。
“泣いている人に大丈夫と聞いてはダメなの。人間は強がりだから大丈夫じゃないのに大丈夫と言ってしまう。だから隣にいてあげるだけでいいの”
うん、分かったよ。
僕は莉子の隣に座り、莉子が落ち着くまでずっと傍にいようと思った。


