この世界は残酷なほど美しい



だが事件は起こった。



「おはよう。莉子」



「あっ流星!昨日はありがとう。あのチョコレートの味忘れられないです」



読んでいた本を閉じて莉子は嬉しそうに言った。
朝からこんな可愛い笑顔を見られて僕は幸せだ。
だけど昨日言われた言葉が頭の中を横切った。


“好きな人のために生きている”


莉子の好きな人が僕だったらこんな悲しい自分を見なくて済んだのに。
人間は欲張りだな。



すると前に座っていたクラスメートが僕の方を見た。


「あのさ…」



次の瞬間、彼は一瞬呼吸を忘れてしまうくらい残虐な言葉を言い放った。




「俺、見ちゃったんだよね。安野が精神科通ってるとこ。流星もあんまり関わらない方がいいんじゃない?」




そう言ったときの顔を僕は一生忘れないと思う。
差別するような発言を僕は憎いとさえ思う。



いっそのこと僕はこいつを殺してやろうかと思った。