この世界は残酷なほど美しい



じゃあそうなると昨夜のウサギの話はなぜ覚えていたのだろうか。



僕の願ったこと。
一体それは何なのだろう。



少ししてから蓮からの連絡があった。
メールの内容は“もうすぐ家に着く”とのこと。
僕のことが大好きな蓮はいつも決まった時間に迎えに来てくれる。
遅刻とドタキャンが大嫌いな蓮のそういうところがしっかりとしていて尊敬をする。


カバンを持って玄関に向かう。


「行ってきます」



返ってこないと分かっていても「行ってきます」と言ってしまう癖を早く直したい。
だけど今日は違った。



「行ってらっしゃい」




空耳かと思った。
だけどそれは間違いなく父さんの声だった。
返ってきた言葉に戸惑いを隠せない僕は唇をぎゅっと噛みしめ部屋から出ていった。



外に出ると重たかった心がすぅっと軽くなった気がした。