この世界は残酷なほど美しい



基本朝食を食べない僕は牛乳を飲んだあとすぐに部屋に向かった。
そんな時後ろから声が聞こえてきた。
それは父さん以外誰でもない。


「あの時の願い事は叶ったか?」



「…いきなり何?何のこと?」



「父さんと昔星に願い事をしただろ。母さんの病院の屋上で。覚えていないか?」



突然そんなこと言われても何が何だか分からない。
昔の記憶なんてそんなの覚えているのが一割で忘れてしまったのが九割を占めている。

病院の屋上で願い事をしたことなんて覚えてもいないし、ましてや内容まで…



「さぁ?何のこと?」



僕はそう言ってパタンとリビングのドアを閉めた。
しばらくその場に立ち、記憶を遡るがやはり分からない。
僕の思い出すことの出来る記憶の範囲はせいぜい一昨日の夕飯の内容までだ。


10年前のことなんて覚えていない。