この世界は残酷なほど美しい



僕が聞くと莉子は顔をピンク色に染めて小さく笑った。
人を好きになったことが今まで無かったのに、何となく莉子の考えていることが今の僕になら分かる気がする。


それは、きっと。
いや、たぶんきっと。

ううん…間違いなく。



「あたしは好きな人のために生きたいな」



ドカンと遠くの方で何かが落ちた音がした。
それは僕の心だった。
今まで積み上げてきたものが一気に崩れ落ちた感じ。
まるでハラハラドキドキする、あのゲームとよく似ていた。



「何か照れるねー!」



「自分で言っといて照れないでよ」



作り笑いをしてみる。
莉子には分かったかな?
僕が心から笑っていないのを。

苦しくて息もまともに出来なくなった僕はその場を立ち上がった。



「流星?」



「確かめたいことがあるんだ。先に帰るよ。莉子も気をつけて帰りなよ。また明日ね」



足早にそこから立ち去った。
正直莉子の隣にいるのが辛かった。
莉子には好きな人がいて、あんな可愛く照れ笑いを見せられたら、この僕の気持ちが枯れてしまうのではないかと思って。



僕が選んだ恋はこんなにも苦しいなんて…本当は泣いてしまいたかった。