こんな誘い方卑怯だと思う。
好物で釣って、断ることを出来ないようにして。
だけどまだ僕には勇気が無いからこんなズルい方法しか見つからなかったんだ。
「お散歩?いいよ。じゃあ歩こうか」
僕たちは肩を並べて歩いていく。
その間内容の薄い話ばかりしていた。
例えば昨日の夕飯当てゲームとか、今日食べたものの話、そして好きな食べ物と嫌いな食べ物。
気づいたら食べ物の話しかしていない。
他人が聞いたら本当にどうでもいい内容かもしれないが僕にとってそれはかけがえのない大事なものだった。
「ここに座ろうか」
莉子がそう言って河川敷に腰を下ろした。
僕も莉子の隣に座る。
まだ青臭さの残る草木が気持ち良さそうに揺れていた。
ゆっくりと単調なスピードの河を見ていたら何だか眠たくなってきた。
「はい、流星」
すると莉子はあげたチョコレートをぱきんっと二つに折り、半分を僕に差し出す。
そんな姿に可愛いと思ってしまうのだ。


