この世界は残酷なほど美しい



パソコンの電源をオフにして財布と携帯を持ち部屋を飛び出した。
玄関に向かう途中父さんとすれ違った。



「これ。流星チョコレート好きだろ?」



渡してきたのはベルギーの国旗がプリントされたチョコレートだった。
それは僕でも知っているくらい有名なチョコレート。
一度でもいいから食べてみたいと思っていたのだ。
僕は無言でそれを受け取り足早に玄関へ向かった。

チョコレートにつられるなんてまだまだお子ちゃまだな、僕は。
心の中で笑ってみた。


一度曇ってしまった心を晴れにするのは難しくて。
だけど莉子はそれを簡単にしてしまう不思議な力を持っていた。


好きだからかな。
もう分かんないや。


マンションを飛び出し僕は無意識に莉子の病院に向かっていた。
何となく莉子に逢える気がしたんだ。



本当に何となく。