もし今ここで「母さんより仕事を取ったんだ」と言ったら殴ってやろうかと思ったのに。
殴って殴って、蹴って蹴って。そうしたら次の日のトップニュース間違いないだろう。
でも父さんは言い訳をすることもなく僕の言葉をそのまま受け止めた。
返す言葉が見つからない。
じゃあもうやめよう。
そう思い唇を噛みしめて部屋を出ようとした。
父さんに背中を向けた瞬間、僕にこう言った。
「流星…でかくなったな。」
今頃気づいたのかよ。
僕はもう父さんの身長を越しているよ。
180センチには届かなかったけど世間一般的には高い方だと思う。
女の子によく告白もされるし、大学志望校の判定もBだった。それに最近好きな人もできた。
父さんの知らないところで僕は成長している。
だけど本当ならそういう他愛のない話を聞いて欲しい。
もし母さんだったらきっと笑顔で僕の話を聞いてくれると思うんだ。
「僕は父さんみたいにはならないから」
最低最悪の息子だ。
親に向かってこんなことしか言えないなんて。
だけど許してよ。
遅れてきた反抗期だと思ってさ。


