誠治は妹のために考えた。
 そして一つの答えを得た。

「桃子、いい考えがある」
「えっ、何?」
「桃子、兄として聞く」
「何よ」
「どんな試練にでも耐えられるか?」
「8日以内に、口内炎を治せるの?」
「聞いているのは兄ちゃんだ」
「耐えるよ。耐えられるよ」
「卓也を愛しているか?」
「まだ早いよ」
「治してやる。お前のその口内炎を」
「本当に!」
「但し、たとえ兄ちゃんでも限界はある」
「あるでしょ、普通」
「まぁ、黙って聞け」
「うん」
「口内炎は放置しておいても、二週間位で治る」
「それ、もう聞いたよ」
「まずは睡眠だ。これをきちんと取らないと、話にならない」
「わかった」
「夜更かしするな」
「分かったって」
「次に歯を磨け」
「歯磨き?」
「口の中を清潔に保つのだ」
「わかった」
「しっかり磨け」
「くどいよ」
「好き嫌いするな」
「何でも食べるよ」
「栄養のバランスを崩すな」
「好き嫌いは無いよ」
「よし、まず言った三点は守ってもらう」
「守れるよ」
「簡単に言うね」
「なんで?」
「兄ちゃんは大変だった」
「お兄ちゃんはそういうトコロ、弱いから」
「はっきり言うなよ」
「妹からの愛情だよ」