何度捨てても柾の手に戻ってくる摩訶不思議なフルート。
ゴミ処理施設から帰ってきたその夜はとてもきれいな満月で、私たちは月見をしながら夕食を取っていた。
その時、偶然見かけたのよ。
屋敷のすみれの花が咲き誇る庭を背に、フルートを口にくわえながら柾の部屋へと壁を這い上がるセーラー服の少女の姿を。
その少女こそが命清椿さんだった--。
その光景を目にした時は自分の目を疑ったわ。
柾の部屋は屋敷の二階にあるのよ?
それを命綱も何もつけずにただ自分の手足だけで壁を這い上がっている少女がいるなんて。
そもそも彼女はどうやってこの屋敷に上がりこんだのかもナゾだった。
セキュリティは万全のこの屋敷に警報も全く鳴らさずに入ってくるなんて…。


