結局、私は放課後になるまで一切、口を開かなかった。


あの後も悠からファミレスに行くかと聞かれたけど私は聞かれるたびに首を左右に振った。


なぜファミレスに拘るのかは分からない。
でも多分、悠なりに考え出した場所だったんだと思う。


変な気遣いさせちゃったかな?


「…凛?」
外を眺めていると悠が遠慮がちに名前を呼んだ。


だから私は視線を悠に移した。
すると悠は白い歯を見せて微笑んだ。


「帰りに何処か、行こうか!」
…そして、また私に気を遣って遊びに誘う。


「そんなに落ち込んでるように見える?」
だから私は平然を装って悠に笑ってみせた。


私が笑うと悠も笑う…というか、喜びと言った方が正しいかもしれない。


「は、隼っ!」
女の子の群れに居ると思われる、隼の名前を叫ぶ悠。
悠の声に隼は気付き、こちらに視線を向けた。
そして女の子達の輪を抜け出して私と悠の所に来てくれた。


「もう平気?」
悠に一瞬だけ視線を向けたけど隼はすぐに私に視線を向け直して問い掛けてきたので私はこくんと頷いた。


私が頷くと悠みたいに隼も笑った。
柔らかく、隼らしい笑みを浮かべた。