すると俺は 沙葉に抱き締められた。 「さ、沙葉?」 「私ね、一ノ瀬くんがいれば それだけで良かった。 でもね? 今は爽くんも失いたくない。 一ノ瀬くん以上に……」 え? それって――――。 「爽くんが大切なの。 爽くんが良いなら 友達から……――――」 そこまで言って 沙葉は俯いてしまった。 きっと沙葉の事だから “都合のいい女”とか思って 言葉を詰まらせたのだろう。 そんな事、 俺はこれっぽっちも 思っていないのに……。