「どした?」
お決まりのセリフで、私の顔を覗き込む。
「ううん」
「何だよ~」
「新学期始まると、心配だなって思っただけ。でも、先生の奥さんなんだから早く慣れなきゃ。だめだな、私はやっぱり子供のまま・・・・・・」
「心配いらないって。俺はどんどんオヤジになってくんだから、女子高生に相手にされなくなるよ」
そんなことない。
かっこいい人はいくつになってもかっこいいんだよ。
モテるからって、先生は絶対に揺らがない。
わかってるけど、気になるのはしょうがない。
私みたいな女子高生がたくさんいるのかなって思うと、胸が痛いんだよね。
「直が最初にやきもちやいてくれた時、俺・・・・・・嬉しかったなぁ」
先生は遠い目をしてそんなことを言ってくれた。
「いつ?」
「夏休みの水泳の補習の時だよ。他の高校の生徒が、俺のこと待ち伏せしててさ。覚えてないの?」