「デザート、何にする?」



大野先輩が、メニューを見せてくれた。




ふたりでひとつのメニューを見た。




「悩みますね~」



「女の子はデザート好きだからな」



「大野先輩は食べないんですか?」



「いや、食べる。俺も好きだから」



照れくさそうに笑う。




ドキ。

ドキ。




「これにします」



「じゃあ、俺もそれにしようかな」




いちご杏仁を注文した。





特に内容のある会話はできないまま、飲み会は終わろうとしていた。



体を直の方にばかり寄せてしまって、大野先輩との間には距離があった。



直と豪太とばかり話していた気がする。




でも、それで良かった。



同じ空間にいることができた。



普通に話せた。





一歩前進。



一歩どころか、十歩くらい前進。



堂々と言える。



今なら。





大野先輩が好きだと。





“あんな男好きじゃない”とか“豪太にしとこっかな”とか、そんな嘘ばかり言う自分は好きじゃない。