「ケーキもあるから、後で食べようね。会社の近くのケーキ屋さんで買って来たんだ」
「ごめんな。お前も働いてるのに・・・・・・いつも俺の為に頑張ってくれて」
“お前”って言われたことも何だかドキっとした。
どうしてだろう。
「お前って呼ばれると、ドキドキするよ」
「そう?じゃあ、お前って何度でも言ってやる。今夜は、お前お前って連発してやるから」
Sな顔した先生が、テーブルの下で私の足先をつっつく。
「初めて先生に“お前”って呼ばれた時のこと、今でも覚えてるんだよ。すごく嬉しくて。矢沢って呼ばれた時も嬉しかったなぁ。名前覚えてくれてたんだ~って感動した」
懐かしい。
みんなの先生だった。
新垣和人。
人気のある体育教師。
みんなの憧れの先生。
たくさんの生徒が先生に恋をしていて。
「直は特別だったよ。俺にとっては」
なぜだか、私が高校生だった頃の話ばかりした。
2人とも忘れるはずがないけど、こうして時々思い出して、より鮮明に覚えていたかった。
先生の特製カフェオレを飲みながら、ケーキを食べた。
疲れている先生に甘いチョコケーキ。

