俺のクラスの田嶋という生徒は、妊娠していなかった。
でも、またいつ妊娠疑惑が出るかわからない。
水谷先生にはこう言ったそうだ。
“子供できてもいいから避妊しない”と。
「おお~。早く座れよ」
黒板の前で生徒達の顔を見回す。
5限目が性教育だという噂はどこからか漏れていて、生徒達は少し浮かれていた。
「先生、エッチなDVDとか見ようよ」
ふざけてそんなことをいう男子を、女子がにらみつけていた。
「今日は、命について考えようと思う」
静まり返る教室。
「俺達は、当たり前のように毎日生きている。そうだよな?」
きょとんとした表情の生徒達。
「ご両親がみんなのことを大切に育ててくれたから、今がある。もしも、みんながお腹の中にいる時に中絶をしていたとしたら、今ここに存在しないんだ」
もしも、産むことを選ばなかったら、七緒はいないということだ。
あの笑顔も、あの声も、存在しない。

