「懐かしいな。一回だけ戻ってみたいな」
「うん。私もそう思う。1日でもいいから戻ってみたい」
「戻れるなら、音楽室でチューしたいな。俺」
桜の木は、ずっと同じ場所で私達を見ていた。
高校に通うたくさんの生徒の恋を、いつも見ているんだよね。
先生のことを好きになる生徒は、これからも絶対にいる。
好きって気持ちが止められないのは、私が一番よく知ってるもん。
その生徒のことをちゃんと考えてあげる先生が、私は好きなんだ。
告白してきた生徒に冷たくできない先生が好き。
だから・・・・・・少しずつ強くなる。
先生の奥さんなんだもん。
「先生は教師としても、男としても、最高だから・・・・・・モテるのは我慢するよ」
「ば~か」
先生は、私の体に体重を預ける。
「俺のこと、信じてて」
「うん。信じてる」
信じるってことの難しさを教えてくれたのも先生だった。
もしかしたら、今でも“信じる”ってどういうことなのか、わかっていないのかもしれない。
信じるって本当に難しいんだもん。