「やっと、思い出した?」


 自転車をとめ、バッグから紙袋を取り出す遼を見ながら、思い出す。



 今年のバレンタインデーはいつもと違うチョコレートを渡したんだ。

 小さな頃から恒例行事のように、私の家からはチョコレート、一ヵ月後、遼の家からはその時々に選んだお菓子・・・それを渡しあうのは、遼と私。

 ずっと、ずっと、思い出せないくらい小さな頃からしていたこと。


 でも、今年は、気持ちを伝える気はなかったけど、でも、好きという気持ちがいっぱいだったから、いつもとは違って、特別なチョコレートを贈ったんだ。

 そのときは転勤のことなんてしらなかったけれど、ね。