いうと、遼はあきれたように、肩をすくめた。



「はらへってんの?」

「へってない! いいもん! 家に帰ってからあける!」

「いいよ、あければ」

「いい! 遼のいじわる。あ!」



 ざああっと、強い風が吹いた。

 揺れる桜の枝。

 風舞い散る桜の花びら。

 それは、夢をみているみたいに綺麗で、見ほれてしまう。



「桜・・・綺麗だな。あの夜は、咲いてなかったけど」

「そうだね」



 あの夜の出来事。

 まだほんの、数週間前のこと・・・。

 でもあのときのような強引な、勢いのない私は・・・



 キスしたいと



 思っても何も出来なかった。