「結婚して」



「へ……?」



「えええええ」というあたしの叫び声は掻き消された。


それよりもホールの中の人達の歓声の方がはるかに大きかったからだ。

みんな口々に、「うお”お”おおお」とか「ひゅうううう」みたいに、文字にするのが難しいような悲鳴をあげている。

そのせいで、ホール自体が震動しているような錯覚すら起きる。


卓巳君は胸にピンマイクをつけていたため、当然この大告白はここにいる全ての人の耳に届いてしまったのだ。


あたしは恥ずかしさのあまり、どうすればいいかわからない。

ただじっと卓巳君の顔を見つめていた。


ほ……本気なのかな。

ひょっとして、これも劇の演出の一つだったりして……あはは。


なんて一人でちょっとした現実逃避もしてみる。


だけど、あたしを見つめる卓巳君の目は真剣そのもので……


なんだか吸い込まれちゃいそう。


卓巳君はさらにバラの花をあたしに近づける。


あたしは震える手でそれに触れた。


「はい」……と小さく応えて。



とたんに、ホールに割れんばかりの拍手と喝采が沸きあがる。


卓巳君はあたしの肩を抱き寄せると満面の笑みを浮かべて、みんなにピースサインを送った。


今のってプロポーズなんだよね?


――か、軽っ……。


ありえないこの展開になんだかクラクラして……あたしはまた眩暈を起こしそうだった。



卓巳君はいつもこうやってあたしを驚かすんだ。

もぉ、心臓もたないよ……。