失恋までした女子生徒を普通の先生は叱れないだろう。

自分が何を言ったのか、すぐ理解出来なかった。

暫く呆然としていた。

そして、班に分かれ、私達の目的地、お台場に向かった。

お台場に向かう途中、やっと自分が何を言ったのか思い出した。

すごく恥ずかしくなった。

やばい。

二人にばれたかな?

けれど、二人は普通に聞いてきた。

「おい、お前、田川が好きだったのか?」

「香、やっぱりそうなの?だから、矢吹くんに慰めてもらってたの?」

何?

この超鈍感な二人は…。

でも内心気持ちがばれなくて、ホッとしていた。

まぁ良いかぁ。

「田川くんかもね!まぁ良いじゃん。もう既に吹っ切れているし!終わったことだしね!」

と二人に笑顔で言えた。

何だか、もうすっかり吹っ切れていた。

私は昨日、俊也に抱き寄せられて、あんなに近くに俊也を感じて、少しずつ俊也の事が気になり始めていた。

矢吹くん、今頃、どうしているかな?

中学生はと言うか、私は単純だ。

昨日まで、伊藤くんを諦めれないと思っていたのに、俊也の事が気になってしまっている。

誰かが言った。

「恋はタイミングとフィーリングとハプニング」だと。

昨日、何とも思わなかった人が、今日は気になっていたりする。

恋はいつどこで、どう始まるかなんて誰にも分からない。

だから面白いのかもしれない。

俊也も上の空だった。

「おい、お前、何で矢田を抱きしめたりしてたんだ?矢吹?」

俊也はずっと私の心配をしてくれていた。

矢田、あいつらとぎくしゃくしてないかなぁ?

あんな事を皆の前で言っちまって、大丈夫なのか?

また虐めに遭ったりしないよな?

俺、矢田を守るどころか、あいつが俺を必死にかばってたし…

マジだっせー。

カッコ悪。

あいつ、小さい身体で凄い奴だなぁ…

夜になって、ホテルの廊下で俊也と会った。

「矢田、大丈夫?」

「え?私は大丈夫だよ!矢吹くんは?」

「俺は、全然平気だけど…あの二人は?
伊藤と衣川?それに、また濱田達に何か言われた?」

「伊藤くんの事は、もう大丈夫!矢吹くんが救ってくれたから、もう吹っ切れた。早いでしょ?」

私は笑った。

「立ち直り早えーよ。」

俊也も笑っていた。