しかし、そんな感傷に浸る間もなく。


「…っち、うぜぇなぁ」

真鍋はただ、そう呟くと無機質な机の引き出しを開けた
琉夏は、ふと自分を見るとあまりに残酷な姿であった

普段着はボロボロに解(ほつ)れ、
痣だらけな身体が見え隠れする。
口枷には赤黒い液体がまとわりつき、
何故自分が何の痛みも感じないのかが不思議だった

(…傷つく心さえも無い、ってか…?)

もう自分がいくら醜いのか想定も出来なかった

考えを巡らせている間に、真鍋は近くに居た
すると真鍋はニヤリ、と不気味に笑った

「お前、コレ分かるか?」
『…!…がァ……!』

途端に落ち着いた口調で喋り出す真鍋を
不審に思い、思わず見上げるとそこには、


ライターがあった



別にライターが苦手な訳じゃない
“火”が駄目なんだ

…どうも昔を思い出す様で

(…まだ俺は、過去に…)

そう思うと歯痒くて、切なくなる


(結局、俺は弱いままなのかよ…)



“お前は弱いな”