ツバメはあたしに綺麗な服を買ってくれた。

 あたしにとってはやっぱりおかしいんじゃないかと思うくらい、飾り気のない服だけれど、少なくともカエルの血は付いていない。

 ―もう、大丈夫。

 あたしが微笑むと、ツバメも笑った。

 あたしは至極いい気分で、ツバメの煙草を奪ってみる。

 案の定煙は喉にしみて、無様に咳込みながら、それをツバメにかえすけど、自分の唇からあの匂いがするのはなかなか素敵。

 おかあさまは嫌がるけど、長く帰れないのなら少しくらい構わないはず。

 ―ねえ、ツバメ。

 ツバメがこちらを見た。そういえば、ツバメもあたしが大好きな綺麗なものたちのひとつなのだ。外の世界をたくさん見つめた空色の瞳は、嗜虐心を煽るくらい綺麗。

 ―いつから煙草を吸っていたっけ。どうして。

 ツバメはほそい声で、臭いを消したいから、と答えたきり黙ってしまった。

 あたしは間違えたかもしれない。ちらちらとツバメを伺う。

 ツバメは哀しみと怒りが混じったような、形容の難しい表情で、あたしを見つめて、それから口を開いた。

 ―聞け。

 そんなことをわざわざ言われなくたって、あたしはツバメの囀りにはきちんと耳を傾けるのだけど、素直に頷いた。

 ―ここから先は一人だ。

 それは、実は予想していた。だってツバメは渡り鳥だもの。あたしはまた、頷く。

 それから、ツバメはなぜか痛ましそうな表情をした。あたしが不思議に思っていると、

 ―お前はもう、帰れない。