「ゆ…悠月は…さ?
意外に…こだわり強いよね。
イラストだって、パソコン使わなかったし、色付けるのだって、手作業でしょ?…大変じゃない?」


こんなこと悠月に言ったら…怒られちゃうかな。

オーダーしたものが届いて一息ついたときに、聞いてみた。



「和之はさ…星河原 敏行って…知ってるでしょ?
有名なプログラマーさん。ホントにゲームが好きで、よく一緒に遊んでくれてた。
だけど…私が美大に編入した年辺りに、持病が悪化して入院しちゃって。

それで…

「お父さん…約束。
私…手書きのイラストでゲーム…作るからね?
アドベンチャーゲーム。
お父さんがプレーしてくれるの…待ってるから。」

そう…誓った日の夜だったかな…

容態が急変して…

お父さんはっ…」


泣きながら話す悠月。


悠月のお父さん…有名なプログラマーさんだったんだね。

お父さんとの…約束だったんだね。

ホントに…悠月は素直で良い子だよな…

そこが…悠月の好きなとこなんだけど。


「悠月?
いい加減…泣き止めって…」


僕が先に会計を済ませておいて、店を出てからも、泣きっぱなし。


「泣き顔も可愛いけど…さ。
悠月のお父さんだってそんな姿…見たくないはずだよ?」


これでも泣き止まないか…
だったら…最終手段だな。

「かじゅっ…んっ…」


ちゅっ…


舌を浅く絡めるキス。

顔を真っ赤にしている悠月をよそに、会社までの道を歩く。

さっきのキスがよほど恥ずかしかったのか、僕の後ろに隠れながらちょこちょこと後を付いてくる。


「ほら、早く歩かないと置いていっちゃうよ?」


ときどきそぉ言いながら足を止め、ゆっくり歩いた。


和之side〈終〉
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