空港に着いて、今度こそ、搭乗手続きやら身体検査を済ませて、
キャリーバッグのガーという一定の音と共に、飛行機に向かって、一歩一歩踏みしめるようにして歩いた。
…だけど。


「離れたく…ないよっ…」


やっぱり涙が溢れた。

そのとき。


「なーる」


声とともに、後ろからギュッと抱きしめられた。


振り向くと、キャリーバッグを傍らに置いた雅志が。

「ま…さし?
何で…」


「来ちゃった。
ホントは来ないはずだったんだけど、付き添いの人…岐阜での研修でお世話になった人が、急きょ来れなくなったから、代わりに俺が行くように頼まれたの。」


雅志に一瞬だけ抱きついてから、一緒に飛行機に乗った。

だから、また会えるから…
あんなに言葉が少なかったんだ…



空港に着いて、それぞれの研修生の家までしっかりと付き添う雅志。


研修生の人が気を使って、私の家を最後にしてくれた。

ここでお別れだ。


抱き合って、熱いキスを交わす。


「…頑張れよ。
まる1日、休みが取れたら…仕事で疲れててもその足で、フランスまで会いに行くからね?」


「約束…してくれる?」


返事の代わりに、軽く唇を重ねてくれた。

雅志、私、フランスで頑張るから。

雅志も…頑張ってね?