ふう。

やっぱり、ダメだ。

思い出しちゃうと、行きたくなくなるなぁ…

雅志と別れるのが…ツラくて仕方がない。


そういえば…雅志との日々を思い出していたら…
忘れていたことがあったのを…
思い出した。


お参り…行かなくちゃ。


でも…


ここからじゃ…かなり遠いし…


どうしよ…


そのとき。

私の目の前に停まった…1台の車。


運転席に乗っていたのは…

「ま…さし…?」


他ならぬ雅志で。


「な…なんでここに?」


「命日じゃねぇの?
奈留の祖父母の。
行ってきますの挨拶と…
大会で準優勝したこと…
まだ言ってないだろ?
俺も、奈留の祖父母に挨拶してないし。」

そういえば…そうだった。

「うん…ありがとう、雅志っ!!」


途中で花屋とスーパーに寄って、
お供えの花と、祖父母が大好きだった水ようかんを買って、
お墓に向かった。


お爺ちゃん、
おばあちゃん。

お元気ですか?

私は、元気です。

私、日本一の女性獣医師を決める大会で優勝したんだよ。
その賞品として、フランスへの留学権が与えられたので、今から行ってきます。
今までと変わらず、空の上から、
私のことを、見守っていてね。


私の後に、雅志も手を合わせていた。