フィラリアの薬を打って、しばらく様子を見る。


しきりに自分でかゆいところを掻く動作も…なくなった。

落ち着いたところで…ブラッシングしてからトリミングしていく。
浮腫がある周りの毛にレイヤーを入れて立たせ、その部分をカバーした。


病院の近くで美容室を経営している友達が言ってた。人間も犬も、気になるところをカバーしてあげれば喜ぶって。


終わったら、手を上げて合図をすれば、その犬をケージに入れれば、自動的に審査員のもとに運ばれる。

そこで、1人の女性獣医師から悲鳴があがった。


隣で作業していた私と同い年くらいの女性獣医師が、口から泡を吹いて、突然倒れたという。

しかも…痙攣も起こしているみたい。


とっさに、ある症状が思い浮かぶ。
…狂犬病。

あの、私が熱中症で倒れた日に…雅志のお母さんから聞いた。


「狂犬病には…気を付けてね?って。」


そのとき聞いた症状が、今の女性と全く同じ。


とりあえず、その女性が扱っていた犬には麻酔を打った。


どうしよう…


「ちょっとどいて。
緊急事態よ。
すぐに病院に運ぶわ。」