「おばあちゃん。
毎年恒例の、お願い。
もち、彼女の分もね?」


「分かってるわよ~。
雅志とその彼女さんのためなら、久しぶりに腕ふるおうかしらねぇ~」


おばあちゃんはそぉ言うと、奥の部屋に消えていった。


頭の中にたくさんの?マークの浮かぶ奈留に、説明してやる。


「俺のおばあさんの家の近くで、毎年盛大に夏祭りがあるの。
屋台もたくさん出て、最後には花火もあがるから、超賑わうんだよね。
…んで、ウチの婆ちゃんは浴衣の着付けの先生してたくらいだから超上手いし、似合うの選んでくれるんだよね。
それ着て祭りいくのが慣習なの。」


「そうなんだ。
…雅志は、幸せ者だね。
私は、祖父母の顔、知らないから…」


「奈留…
ごめん。
俺…知らなくて…」


「謝らないで?
気にしてないから。」


ふと訪れた沈黙を破るように、婆ちゃんが奈留に声を掛けた。


「ホラ、着付けしてもらってきな?」


「うん!
じゃあ、行ってくる!!」


奈留はそう言って、俺に笑顔を見せた。


数分後。


「どう…かな…」


奈留は、さっきとは違い、頬を赤くしながらおずおずと俺の前に来る。


大人っぽい黒ベースで花柄の浴衣に身を包んでいる奈留。

帯びの淡い黄色が、奈留の明るい性格をよく表しているようだ。


「…似合ってるよ。
…すごい、可愛い。」


浴衣を着崩れさせるワケにはいかないから、
そって頭を撫でてやった。
俺は、じいちゃんに着付けてもらう。


「じゃあ、ちょっと待ってて?」


幾何学模様の浴衣を着て、奈留の元に戻る。


「カッコイイ…」


照れてるのか、奈留からの言葉はそれだけだったけれど、十分嬉しかった。