途中で泣き出した悠月の肩を…そっと抱いた。


鳴り響くモニターアラームに駆け付けたであろう看護士が先生に一言告げた。


「先生…脈拍が…20台まで下がっています…」


先生は、思案を巡らせているような表情を崩さぬまま、病室に入っていった。

1分も経たないうちに、峰浦が悠月の親戚への連絡に走った。

その数分後、


午後16時16分。


一定の音を響かせた心電図が示す通り、穏やかな永遠の眠りについた。


先生が死亡宣告でもしたのであろう、
病室からも看護師の泣き声が聞こえた。


「お母さん…お疲れ様。
よく…頑張ったね…」


悠月はたった一言、掠れた声で言うと、僕の前で泣き崩れた。



パタパタと音を立てて、悠月の親戚たちが集まってくる。


「悠月ちゃんっ…
お母さんは?」


悠月の代わりに、僕が首を横に振った。


「よく…頑張ったわね…」


「峰浦…」


いつの間にか、峰浦が僕の肩に手を置いていた。


「良かった。
無事に旦那さんのもとにいけたか。
肺ガンは死に目に吐血したりで苦しむのに…
それもなく、娘にもその婿さんにも会えて…
幸せな最期だったと思うぜ。」


「峰浦。
いい話だが、多少余計な単語が入ったようだ。」


電話が入る。

この番号は…

プロデューサーだ。


「もしもし。」


『悠月のお母さんの容態は?
…そうか。
分かった。
そういうことなら…祝賀会を兼ねた社員旅行、日を改めるから。
…またその件に関しては、連絡する。』


プロデューサーさんはちゃんと悠月のことも心配してくれてた。


そのとき、先生が病室から出てきた。


「苦しむことなく穏やかに…無事に…逝去されました。」


その言葉に、親戚一同、目を真っ赤にしながらもどこか安堵した表情を浮かべていた。