湖に咲く 一輪の薔薇

結局車で行く事になり、XOについた時には1時半だった。


『拓巳、財布持ってこなくても払わないから、大丈夫だよ』

拓巳「え?」

『払わせてくれないと思う』


拓巳「それは仁菜財閥の令嬢だから?」


『………………かもね』

それを言われた時、無性に悲しくなった。

今まで触れられたくなかった。
本当のあたしを見てくれる人なんて、過去にお母様と卓真だけ。


今ではお母様も卓真もあたしをただのお金にすがりつく“恋華”だとしか見ていないだろう。



あたしを“仁菜恋華”として見てくれる人は居ないのか。

そんな考えはXOのBGMにかき消された。









チリンチリーン

「いらっしゃいませーっ!」

『ねぇ、店長だして』


「はい?何ですか」

『店長出せって言ってるじゃない』



拓巳達は先に席に座っていて、雑談をしている。
此方からもその様子が伺える。



「だから―」

「あれっ?恋華さん!?」


『あ。お久しぶりです、小倉さん(おぐら)』

「どうしたんですか!?何かここの接客に問題でも!?」


『いいえ。ただ、知り合いとここに来ただけなのだけれど。まぁ、強いて言うなら、そこの女性かしら』


「すみません!お気に触りましたか!?ほらっ、お前も謝れ!」


凄い勢いで上半身を九十度に曲げ、謝る店長…――…もとい小倉。




「店長ぉ、何でこんな高校生に頭下げなきゃ―」


「ばかっ!お前、この人は仁菜財閥のご令嬢だぞっ!?」


「えぇっ!?ご、ごめんなさいっ!」




ほら、また。

またあたしを〝仁菜財閥のご令嬢〟に仕立てる。

人の気も知らないでっ!