俺の隣には、蹲っている恋人がいる。

彼は俺の右腕を、
それは美味しそうに食べている。

夜景を見ながらのディナーだったからだ。


それを見た少女は。

「あ、ごめんなさい。
 それじゃあ駄目ですね」

「そういう事だから」

驚きもせず、怖がりもせず
去って行こうとする彼女を見るに、
こういう事に馴れているのだろうか。

そんな事を思っていると、
ふいに恋人が顔を上げた。


「……血の匂いがする」

「当たり前だろ」

俺の腕と、彼の口周りは血塗れだ。


「違うよ」

彼の目線は、少女に向けられた。



「解るんですね」

言いながら、彼女は
背後に置かれていた袋に手を伸ばした。