「あ………!!」

風が急に冷たくなった頃、アネモネに可愛い蕾が出来た。
それまで茎は伸びるけど変化が無くて、花が咲くのか不安になったりもしたけど。
茂音君は大丈夫、大丈夫、と笑っていた。

「……可愛いな。」

小さくて可愛い蕾。
見ているとそれだけで優しい気持ちになれる。

「それはもしかしてアネモネかい……?」

「え?」

蕾を見ていたら、お風呂上がりのお父さんに急に声をかけられた。

「そうだけど……。」

「懐かしいな……。」

その瞬間、お父さんはフッと優しい顔になった。
昔と同じ、あの優しい顔に。

「でも、育てるの大変らしいぞ。昔、母さんに怒られたから。」

「え?」

「まだ結婚する前に、父さん母さんにあげる気で買ってきて、結局母さんに押し付けたんだ。」

「……。」

聞いたことがない、二人の話。
こんなに楽しそうに話すお父さんを久しぶりに見た気がする。

「大事に育てろよ?」

「うん……。」