「ところで会長さん、何でアネモネ探してたの?」

「え?」

「だから、アネモネ。他にも花はたくさんあるじゃん?」

「うん……。」

お父さんからお母さんへの贈り物。
この話は誰にもしたことが無かった。
なんでも話す結にだって話したことがない。

だけど………

「あのね、昔、お父さんがお母さんにプレゼントした花なの。」

「へぇー。」

「私ももらったの。」

「うんうん。」

「お父さんとお母さん幸せそうだった。」

「ふうん……。」

ぽつんぽつんと話しても、茂音君はやんわりと包むように相槌を打つ。
無意識に¨だった¨と使っても彼は何も言わなかった。

「じゃあ会長さんにとって、思い出の花なんだ?」

「うん……。」

「ふうん。」

そう呟いて茂音君は遠くの空を見た。
綺麗な夕焼け空。
茂音君の茶色の髪がいつもより赤く見える。