着替え終わりカーテンを開けると、佐野君は窓枠に手をつき、グラウンドを眺めていた。

「…着替えた?」

「うん」

こちらを振り向いた佐野君の顔が少し赤くて、私までつられて顔が熱くなりそうだった。

「まだ横になってたら?」

言うと佐野君は窓枠から手を離し、私を再びベッドに戻した。

「もうすぐ先生も来るだろうから、いいよ。制服シワになるし…」

私は横にはならずにベッドに腰掛け、佐野君も私の隣に腰を下ろす。

「…佐野君は着替えないの?」

「俺はいいよ、急いで来たから、バッグに丸めて入れた」

私の為に急いで来てくれたの?佐野君…

「シワになるよ?」

「元々ヨレヨレだし、別にいいよ」

「あはは。ヨレヨレって…確かにそうかも」

「うん。シャツのボタンなんか随分前から外れてるし、俺、お裁縫なんて出来ないし、ははは」

「私、代えのボタン持ってるから付けてあげるよ、シャツ出して?」

「いいの?」

「うん」

佐野君はバッグからシャツを取り出し、私は自分の鞄からソーイングセットを出した。

シャツを受け取り、ボタンを付け始めるとじっと佐野君が見つめてくるものだから、変に緊張してしまう。

「よくそんな細かい事出来るよね?」

「え?ボタン付け位小学生でも出来るよ」

「俺には無理だ…不器用だし…細かい事やってるとイライラする…」

「そうなんだ?」

「うん。料理とかも無理だ」

「でも佐野君一人暮らしでしょ?ご飯は?」

「バイトの賄いが唯一のまともな飯だな…」

「……今度…ご飯作ってあげようか?」


自分の口から出た言葉に驚いた。

やだ、私ったら…彼女でもないくせに…

「あはは。ごめんなさい、今のじょうだ…」

冗談だと言おうとしたのに、

「マジで?飯作ってくれんの?」

満面の笑顔の佐野君。

私がご飯作りに行ってもいいの?佐野君…

「…うん。佐野君が…よければ…」

「いいに決まってんじゃん。奏の飯…あ。いけね、考えただけでもヨダレが…」

…佐野君…あんまり期待しないで…体した物、作れないから…


お料理の本見て、練習しなくちゃ…