「…りい?どうかしたのかい?」

 気付くと天一はすでに去っていた。未だに色を失ったままへたりこむりいの背に、声がかかる。

「…晴明。ああ、少し…その、眠くて。ぼんやりしていた、すまぬ」

 天一に会ったことは言うべきではないと思い、りいはへらりと笑ってごまかす。晴明はとくに追求するわけでもなく、小首を傾げた。夜勤明けのためか垂らしたままの黒髪がさらりと揺れる。

「疲れてるんじゃない?空き部屋だし、少し寝てたら」

「ああ…いや、大丈夫」

 実際もう眠気など感じない。一度一人で考えをまとめたかった。