「…どこに住まわれる方です?」

「…それはっ」

 晴明は淡々と言葉を重ねる。

「私がこの程度のことに気付かないとでも?年中お呼び立ていただきながらずいぶん見くびられたもの」

 冷たく皮肉な口調に、りいでさえぞっとする。

 これもまた、晴明の一面であった。


 超子は唇を噛んで俯いてしまった。

「…無礼な…!」

 隣に控えた女房が、ようやく声をあげる。

 だが、超子自らがそれを制した。

「お止め。…わかったわ、晴明。答えると言ったのはわらわだもの」

 超子がゆっくり顔をあげる。

 顔は青ざめているものの、視線は強かった。


「お前の言うとおりよ。詮子は…」

「姫様!!」

 しかし、超子が口を開いた瞬間、鋭い声が飛んだ。

 驚いて超子が口をつぐむ。

 声の主は、丁度部屋に入ってきた佐藤だった。

 佐藤自身も、自分の大声に戸惑ったように佇んでいる。

「…佐藤。これは」

「姫様。このような時間にどうなさったのです。陰陽師の前に姿を見せるなどはしたないですぞ」

 佐藤はやや早口で告げた。

「…佐藤!少しお待ちなさい」

「いけませんぞ。ささ、疾くお休みくだされ。…女房たち、何をしておる。早く姫様を」

「佐藤っ」

 だが、超子の抗議は聞き入れられない。

「すぐにお館様がお渡りになります。安倍殿、どうかお話はお館様のほうに」