「そうか？」

　りいははっきりと問い返す。

　晴明が驚いたように目を瞠った。

　晴明は感情を取り繕うのが上手い。それは間違いない。

　だが、時折見える屈託のない笑みだとか、りいを心配してくれた表情だとか、驚いたようなその表情は、決して偽りではない。


「うまく言えないが…私は、お前の、今の顔が好きだ。あの完璧な作り笑いより、ずっと。…それでは、だめか？」

　我ながらよくわからないことを言っているな、と思いながら、晴明に目をやると―――

　きっと、なにそれ、と吹き出すだろうな、という予想に反して、晴明は呆気にとられた様子。

　何度かまばたくうちに、白い頬に朱がさした。

「な…なにそれ…」

　言いながら、視線を反らす。

　どうやら、言わんとすることは伝わったようだ。

「俺までたらしこまないでよ。あーほんっとたち悪い」

　ぶつぶつと呟く晴明が可笑しくて、つい口元がゆるむ。

（こいつ…照れているのか…？）

　笑いをこらえきれないまま、りいは言う。

「ほら、お前もなかなかに分かりやすいだろう」

「…君に言われたくない」

　晴明が不満げにこちらを睨む。

　普段とは完全に形勢逆転である。りいがなおも笑っていると、晴明は居心地悪げに立ち上がった。

「…膳、下げてくるから」