「そのくらいお前がばかばかしい悩みかたをしていたんだ」

 晴明はまた苦笑。

「よく言うよ…」


「ああ、そうだ、忘れていたが」

 りいはふと思い出して話の流れを変えた。

「また、助けられたな。ありがとう」

「え?」

 晴明はまたしても固まる。

「えっ?」

 焦ったのは、りいである。

 今の会話に何かまずいところがあっただろうか?

 無言で冷や汗をかくりいをよそに、晴明はしばらくして、吹き出した。

「なに、そんなこと気にしなくていいのに!結局俺いらなかったでしょ、あれ」

 川にどぼーん、だからねえ、などと呟く。

「そういう問題じゃないだろう」

「いや、その程度でありがたがられるなんてなかなかないから!りい、義理堅い!」

 笑い続ける晴明に、りいは憮然とした。

「私はこうなんだ!慣れろ!」

「慣れろって…」

 一度笑い出すと止まらなくなるらしい。

 晴明らしい表情が戻ってきたことは嬉しいはずなのだが…

 りいは眉間にしわを寄せた。



「…それにしてもさあ、」

 しばらくして、笑いから立ち直った晴明が頬を撫でながら言う。

 その頬には殴られた痕がはっきりと残っている。


 のんびりとした表情で、晴明は、

 とんでもない発言をした。



「やることが男前だよねえ…男子(おのこ)にもなかなかいないよ、こんな熱い人」