「…違うッ!!」

 りいはあらんかぎりの声で叫んだ。

 晴明が驚いたように口をつぐむ。

「…だから…私は…」

 りいは再び言葉に迷った。

 焦る。

 はやく、自分の思いを伝えなくては。

 また、晴明を傷つけてしまう。

 それだけは、嫌だった。

 必死で頭を巡らす。

 そうしてやっと弾き出したのは…


「…表に出ろっ!」


「…………は」

 晴明がまたも絶句する。

 りいも自分の口から出た言葉のあまりの場違いさに呆然とした。

 二人はしばし無言で向かいあう。

(違う!なんと言うか、これは、違う!)

 そうは思うものの、りいは気のきいた言葉ひとつ思い浮かばない。

 頭の中は最早ぐちゃぐちゃで、このまま煙でも上がるのではないかと思うほどだ。


 その時、黙って二人を見ていた保憲が、とうとう吹き出した。

「…晴明、行ってこい」

 笑いを含んだ声で、促す。

 りいは思わず晴明と顔を見合わせた。