道摩の娘

 そんな、いつものような、どこかおかしなやりとりが続いて。

 ふっ、と、言葉が途切れた。

 目が合う。

 そこにいるのは、いかにも晴明らしく、どこまでも人を喰ったような話し方をする、美しい…

 黄金の妖狐。

 西日を受けて、その毛並みがきらきらと輝いていた。

 りいが自室に保管している狐の毛と、同じ色だ。

 考えてみればあの妖狐には、必ず晴明が絡んでいた。

 しかし、まだ信じきれないような気持ちもある。

「…晴明、なのか」

 りいが今更呟いた。

 妖狐は逡巡するように目を伏せた。


 やがて、妖狐は静かに頷いた。


「りい、…その衣、返して」

 りいは素直に抱えていた衣を差し出す。

 が、そのとき、ふと気づいた。

 川に入ってびしょ濡れのりいが抱えていたものだから、その衣にまで水が染みている。

「すまない、今乾かして…」

 妖狐は小さな笑い声をもらした。

 晴明がよくやるように。

「いや、濡れててもなんでも、単衣破っちゃったから、それないと人間に戻れない」


 あわててりいが衣を返し、後ろを向く。

 ややあって、背後の気配はいつもの晴明のものになった。

「もういいよ」

 言われて振り返ると、晴明がそこにいた。

 確かに、りいが先ほどまで預かっていた衣を纏っている。

 いつものように無駄に美しい顔立ちと、優雅な雰囲気。

 だが、その髪はまだ黄金に輝いていた。

「せい、めい…」